2024年11月24日日曜日

第24回:オバマ・ドクトリンの根幹にある自虐主義

 前回の「常識を取り戻した米国民の勝利」という記事の中で、安倍晋三元首相が「トランプ氏が分断を生んだのではなく、米国社会の分断がトランプ大統領を生んだ。そして、その分断を作ったのは、リベラル派であり、オバマ政権の8年間だった」と語られた言葉を紹介させていただきました。そこで、今回からオバマ元大統領の政治信条がいかに恐ろしいものであったのか、ということを書き記してみようと思います。オバマ政権の異常さを知ることで、トランプ次期大統領の誕生が神の摂理であったことが分かるでしょうし、オバマ政権の正体を知ることで、どれほど米国が地獄の苦しみの中で呻吟(しんぎん)していたかが分かるようになると思うからです。

 そこで、今回はオバマ元大統領の国家観・世界観について論じてみようと思います。ここではっきりと言えることは、オバマ元大統領だけが歴代の大統領とは全く異なるレンズで世界を見ていたということです。そして、オバマ元大統領だけが米国を諸悪の根源と見ており、米国は国際秩序の破壊者であり、世界平和の阻害者であると認識していたということです。

 その典型的な実例として、2001年9月11日に発生した米国同時多発テロに対する声明を挙げることができます。当時イリノイ州上院議員であったオバマ氏は「ハイドパーク・ヘラルド」というシカゴのコミュニティ紙に次のような声明を発表しました。
 「この悲劇の本質は、攻撃した者たちに対する共感の根本的な不在、つまり、他者の人間性や苦しみを想像・連結する能力のなさに由来する。多くの場合、(テロは)貧困や無知、無力、絶望から生まれる。」

 この声明の中で、オバマ元大統領は、同時多発テロの原因はテロリストに対する共感と同情の欠如にこそあるとし、テロ攻撃を受けたことの責任の一端は米国自身にあると告発したのです。テロリストが残虐なテロ行為を行うのは、貧困のゆえであり、将来に対する生活不安や絶望が、彼らをテロ行為に駆り立てているというのです。では、彼らを絶望させ、彼らを貧困にさせ、彼らに無力感を味わせているのは、一体誰なのかと言えば、それが米国であるというのです。つまり、オバマ元大統領の世界観とは、世界が混乱と紛争の只中にあり、米国に対する憎悪が吹き荒れているのは、米国自身の責任であり、自業自得であるという典型的な反米主義なのです。

 同時多発テロから7年後、オバマ氏は米国大統領に就任しましたが、その世界観を端的に物語るオバマ元大統領のスピーチがあります。それは、2015年1月に発生したフランスの風刺週刊誌シャルリエブド本社がイスラム過激派により襲撃された事件の翌月に語られたものでした。このスピーチの中で、オバマ元大統領は次のように言い放ったのです。

 「十字軍や異端審問で、人々はキリストの名で恐ろしい行為をした。米国でもキリストの名で奴隷制度やジム・クロウ(南部で行われた黒人隔離政策)が正当化された。我々には信仰を悪用・歪曲する罪深い傾向がある。」

 国際社会が結束してイスラム過激派の蛮行を非難し、その不義に立ち向かおうとする機運が高まる中で、オバマ元大統領は、過去に多くの過ちを犯したキリスト教徒や米国にイスラム過激派を一方的に非難する資格はない、と主張したのです。自由世界の指導的立場にあるはずの米国大統領が、イスラム過激派と戦う人々を貶(おとし)めるような発言を公の場でしたことは、自由を愛する多くの人々を愕然とさせました。

 また、パリでは各国首脳40人以上が参加してテロ事件に抗議する大規模なパレードが行われましたが、オバマ元大統領だけが参加しませんでした。CNNは大統領が参加しなかった理由をホワイトハウスに問い合わせていますが、返答はなかったということです。それは、オバマ元大統領が自由を守るために立ち上がった各国首脳とは全く異なる価値観で世界を見つめていたからです。

 オバマ元大統領にとっては、米国こそが諸悪の根源でした。オバマ政権は自由と人権、法の支配を軸とする国際秩序に挑戦する勢力を封じ込めるのではなく、むしろ米国自身を封じ込めることが大切であると考えていたのです。なぜなら、オバマ元大統領にとって、世界の脅威は共産主義国家でも、イスラム過激派でも、専制主義国家でもなかったからです。世界にとっての最大の脅威は米国であり、米国こそが諸悪の根源だったのです。オバマ元大統領が「米国を根本から造りかえる」というスローガンを掲げたのは、米国を根本から破壊するという意味だったのです。極論すれば、彼が大統領になった目的は米国の建国精神と米国民の常識を粉々にするためだったのです。

 オバマ政権の外交政策は「米国の封じ込め」であり、これが「オバマ・ドクトリン(政治・外交・軍事などにおける基本原則)」と呼ばれているものですが、オバマ・ドクトリンの根幹とは何か、それを簡単に言えば米国を世界の問題児とみなす自虐主義なのです。オバマ元大統領は、超大国の米国は傲慢かつ自己中心的であり、その行動が国際秩序を乱し、世界を紛争と混乱に陥れていると思っていたのです。従って、米国の力を抑制し、その行動を封じ込めることが米国と世界の利益になると本気で考えていたのです。ある保守派の評論家はオバマ元大統領の国家観について、「レーガン元大統領はソ連を悪の帝国と呼んだが、オバマ大統領は米国を悪の帝国と見ている」と厳しく非難しました。

 共和党のテッド・クルーズ上院議員はオバマ政権下での政治状況を嘆きつつ、「この国を世界の自由の代弁者、丘の上の輝く町にした米国の理念が、我々の手から離れている」と語りました。また、ルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長は「恐ろしいことを言うが、私はオバマ氏が米国を愛しているとは思えない」と発言し、「オバマ氏は我々のように愛国心を通じて育てられてこなかった」とまで断言したのです。

 それでは、なぜ、オバマ元大統領の世界観はこのように反米的で、自虐的なものになってしまったのでしょうか。はっきり言えることは、オバマ元大統領がマルクス主義の信奉者であり、熱烈なマルクス・レーニン主義者であったということです。

 米国大統領が反米主義的世界観の持ち主であり、熱烈なマルクス・レーニン主義者であったということに、今日の米国と世界が直面している諸問題の根源があるのです。実に、米国の分断はオバマ政権の時から始まっていたのです。米国の常識が失われ、愛国心が軽んじられるようになった時から、米国は分断と対立という闇の中をさまようようになってしまったのです。そして、米国を暗闇が覆うようになった時から、世界は暗黒の時代を迎えるようになったのです。私たちはそろそろこの真実に気づかなければなりません。

 米国と世界を混迷する暗黒の時代から救い出すために、トランプ大統領は出現しました。そして、これがまさに人類にとっての福音であり、神からの贈り物であったのです。これこそが、米国と世界が知らなければならない真実であることを私たちは決して忘れてはならないと思うのです。

 あなたがたは、よく知っておかねばならない。すべて不品行な者、汚れたことをする者、貪欲な者、すなわち、偶像を礼拝する者は、キリストと神との国をつぐことができない。あなたがたは、だれにも不誠実な言葉でだまされてはいけない。これらのことから、神の怒りは不従順の子らに下るのである。だから、彼らの仲間になってはいけない。あなたがたは、以前はやみであったが、今は主にあって光となっている。光の子らしく歩きなさい――光はあらゆる善意と正義と真実との実を結ばせるものである――主に喜ばれるものがなんであるかを、わきまえ知りなさい。実を結ばないやみのわざに加わらないで、むしろ、それを指摘してやりなさい。彼らが隠れて行っていることは、口にするだけでも恥ずかしい事である。しかし、光にさらされる時、すべてのものは、明らかになる。
(エペソ人への手紙 5章 5-13節)