2024年12月1日日曜日

第25回:反米大統領バラク・オバマの思想的背景

 今、なぜ、あえてオバマ元大統領の世界観やその思想的背景を検証するのかと言えば、オバマ元大統領の正体を知ることなしに、トランプ次期大統領を正しく理解することはできないと思うからです。トランプ次期大統領は米国を修復し、傷ついた米国をいやさなければならないと訴えました。選挙集会において、トランプ次期大統領がスピーチをする時の演台には、「TRUMP WILL FIX IT」という政治的スローガンが刻まれていました。これは、壊れかけた米国を修繕し、米国が抱える諸問題を解決することが、トランプ政権の使命であることを表現した言葉です。

 「TRUMP WILL FIX IT」とはどういう意味なのでしょう。これは文字通りには、「トランプが解決する、トランプが修復する」という意味です。現在の米国は解決されなければならない多くの問題を抱えており、また、米国は今や壊れかけているのであり、それを修繕しなければならないというのがトランプ次期大統領の基本的な国家観だったのです。

 では、どうして米国は修復されなければならないほどに、傷つき、壊されてしまったのでしょうか。その元凶はオバマ政権の8年間にありました。オバマ元大統領によって、米国は傷つき、病魔に侵され、壊れかけているというのです。一刻の猶予もなく、米国は修復され、いやされなければならない。そして、それができるのはトランプ次期大統領だけであるというのが、「TRUMP WILL FIX IT」に込められた意味なのです。

 米国が壊されている原因は、オバマ元大統領の政治理念にありました。それが、「米国を根本的に造り変える(Fundamentally Transform America)」ということでした。オバマ政権の8年間で米国は全く様変わりしてしまったのです。それはもはやかつてのような米国ではありませんでした。美しい建国精神は葬り去られ、かつて偉大な国家であった米国は今や世界の問題児と認識されるようになったのです。多くの米国民が愛国心を失い、米国人であることを誇りに思うことができなくなり、自信と希望を失ってしまったのです。実は、このように米国民の意識を変えることこそが、オバマ元大統領の狙いだったのです。そして、最終的には米国を全く新しい社会主義国家に、さらには共産主義国家へと変質させようとしていたのです。

 ところで、オバマ元大統領の米国共産化政策を支えていた影の理論家がいたことをご存知でしょうか。その人物はソウル・アリンスキー(社会運動家・作家 1909年~1972年)という極左活動家なのです。アリンスキー氏はその著書の中で、資本主義を打倒し、社会主義を実現することを最終目標として掲げており、そのための理論と手法を提示していました。そして、このアリンスキー氏の理論と手法に共鳴し、それらのすべてを吸収しながら、米国を根本的から造り変えていくために、政治の世界に足を踏み入れたのがオバマ元大統領であったのです。

 アリンスキー氏は極左活動家であり、革命的に米国を共産化することを目的としていましたが、しかし、彼には従来の過激派とは異なる点がありました。それは、アリンスキー氏が性急な暴力革命によってではなく、時間をかけて漸進的かつ隠密に米国を左傾化させていこうとしていたことです。アリンスキー氏はかつての左翼活動の限界と問題点を見抜いていたのです。それは、多くの左翼活動家が不潔で過激な服装をし、身だしなみなどには全く気を配ることなく、国家権力に卑猥(ひわい)で下品な言葉を浴びせることしかしないため、民衆の支持をほとんど得られていないという現実でした。アリンスキー氏は民衆を味方にするためには、革命家の本性を隠すべきであり、とりわけ過激派と見られないような身だしなみを心がけ、民衆に好感を持たれるようにしなければならないと説いたのです。

 オバマ元大統領の振舞いは、アリンスキー氏の手法を忠実に実行したものだったのです。結果として、多くの米国民のみならず、世界中の人々が今なおオバマ元大統領に対してある種の好感を抱いているのは、アリンスキー氏の手法によるところが大きいのです。身だしなみを整え、美しい言葉で語りかけ、善良な人物であることをアピールするという手法により、世界中の人がだまされました。そのことを象徴する出来事がオバマ元大統領の「ノーベル平和賞」受賞だったのです。

 アリンスキー氏の本性を知ることのできる一つの事実があります。それは彼の著書『過激派のルール(原題:Rules of Radicals)』に記された献辞です。本の著者は一般に家族や恩人らへの感謝を表わすために献辞というものを記します。ところが、アリンスキー氏が記した献辞の相手は米国民にとってはとても受け入れられない意外な存在でした。アリンスキー氏がその著書を捧げた相手とは、「ルシファー」だったのです。ルシファーとは聖書においては「悪魔、サタン」と認識されている堕天使であり、創造主なる神に反逆し、天上から追放された存在なのです。アリンスキー氏は堕天使ルシファーを「神に反逆し、効果的に自らの王国を築き上げた最初の過激派」として称賛していたのです。ルシファーに対する献辞を捧げることは、まさに悪魔崇拝そのものなのです。

 因みに、2016年の民主党の大統領候補であったヒラリー・クリントン氏もアリンスキー氏から多大な影響を受けた人物でした。彼女がマサチューセッツ州にある名門女子大ウェルズリー大学4年の時に、卒業論文のテーマに選んだのはアリンスキー氏の活動についてだったのです。ヒラリー氏は卒論執筆のためにアリンスキー氏に2度インタビューしており、さらに同氏をウェルズリー大の講演会に招くなど親交を深めていました。

 もし、2016年の大統領選挙において、民主党のヒラリー・クリントン候補が勝利していたなら、米国の最高権力者の座はアリンスキー氏の信奉者から信奉者へと引き継がれていたことになります。さらに、ヒラリー氏が再選されれば、オバマ、ヒラリー両大統領による4期16年の政権のもとで米国はいよいよ左傾化され、オバマ元大統領が目指していた「米国を根本から造り変える」という最終目標が完了していたかもしれないのです。

 この悪夢のシナリオを阻止したのが、トランプ政権の出現でした。米国の有権者のほとんどは、オバマ、ヒラリー両氏がアリンスキー氏の弟子であったことを知りません。もしかしたら、トランプ次期大統領自身も知らなかったのかもしれません。しかし、重要なことは、ドナルド・トランプという人物の出現により、米国が左翼革命の危機から瀬戸際のところで救われたという事実なのです。その意味では、ドナルド・トランプという人物は、まさに「米国の救世主」でもあったのです。

 だれがどんな事をしても、それにだまされてはならない。まず背教のことが起り、不法の者、すなわち、滅びの子が現れるにちがいない。彼は、すべて神と呼ばれたり拝まれたりするものに反抗して立ち上がり、自ら神の宮に座して、自分は神だと宣言する。
 (テサロニケ人への第二の手紙 2章 3-4節)