実にシンプルな問いかけですが、「なぜ、あの時、戦争が起きたのか」、そして、「なぜ、あの時には戦争が起きなかったのか」。21世紀も、もうすぐ4半世紀を迎えますが、戦争や紛争について極めて単純な問いかけをしてみましょう。そして、歴史の事実を踏まえて、その真実を受け止める謙虚さを私たちは持つべきなのです。
トランプ前大統領は、ロシア・ウクライナ戦争について、「もし私が大統領であったなら、戦争は決して起きなかった」と断言しました。そして、なぜ、バイデン政権においては戦争が起きてしまったのか、という単純な問いかけをしました。この問いかけにどのように答えることができますか。
日本の主要メディアはこの問いかけに答えることはできないでしょう。また、それらのメディアに出演している専門家と言われる人々、あるいは主要な新聞や雑誌に寄稿している学者たちも答えられないでしょう。それは、なぜでしょうか。彼らが答えられないのは、不都合な真実を国民に知られてしまうからです。
では、その不都合な真実とは何でしょうか。それは、トランプ大統領の時代が最も平和であったということです。米国はトランプ政権であった4年間、対外戦争を起こしていません。今世紀になって最初の8年間はジョージ・W・ブッシュ大統領でしたが、対テロ戦争の名の下にアフガニスタン戦争を始め、さらにはイラク戦争を起こしました。また、その次のバラク・オバマ大統領もその8年間のうちにリビア内戦に介入し、シリア内戦にも介入しました。さらにパキスタンには373回の無人機攻撃を行い、民間人を含む2,089人を死亡させています。因みに、ブッシュ大統領による無人機攻撃は51回、死亡者は410人でした。オバマ元大統領が「史上最悪の爆弾魔」と呼ばれていることを知っていますか。
ロシアについていえば、グルジア戦争が起きたのは、ブッシュ政権の時であり、クリミア半島が併合されたのは、オバマ政権の時であり、ウクライナ戦争が始まったのはバイデン政権になってからです。また、中東情勢においてもイスラエルとアラブ諸国の和平が進展したのはトランプ政権の時であり、アブラハム合意によりイスラエルとアラブ首長国連邦は国交正常化を実現したのです。
報道されない不都合な真実がここにあるのです。国民に知られたくない歴史の真実がここにあるのです。トランプ前大統領は外的な素行とは裏腹に、人が死ぬこと、とりわけても戦争で多くの生命が奪われることをできるだけ避けたいと思っているのであり、率直に言えば、人が死ぬことをとても嫌がっているのです。トランプ前大統領はシリアのアサド政権が化学兵器を使用したことに対する報復として、空軍基地をミサイル攻撃したことを除けば、2017年から21年までの任期中に新たな戦争を始めていないのです。この事実は、最近の米国大統領の中では稀なことであることを私たちは覚えておかなければなりません。
バイデン政権において、「なぜ、戦争が起きたのか」、その問いに対する答えは、バイデン大統領の対ロシア政策が弱腰であり、臆病なものであったからです。バイデン大統領はロシアのウクライナへの軍事侵攻があることを確信していると、記者の質問に答えながらも、軍事力を行使するつもりはないと発言し、大規模な経済制裁を科すとだけ警告しました。つまり、バイデン大統領はロシアがウクライナに侵攻するということを知りながらも、戦争を止めようとはしなかったのです。そして、ロシアは米国の軟弱姿勢を見て、ウクライナに攻め込んだのです。プーチン大統領は米国にはロシアの軍事行動を阻止する何の手段もないことを見抜いていたのであり、バイデン大統領がウクライナの平和について真剣に考えていないことを察知していたのです。これが、戦争が起きた原因です。
さらに、ロシアにはウクライナに軍事侵攻する隠された真実がありました。そして、その真実はほとんど報道されることはありませんでした。その真実については、改めて別の機会に明らかにしたいと思いますが、少なくともこの真実をトランプ前大統領ははっきりと知っていました。だからこそ、「もし私が大統領であったなら、戦争は決して起きなかった」と断言できたのです。真摯に平和を願い、全力で戦争を阻止しようとする意志がなければ、戦争という悲劇を避けることはできません。これが歴史の教訓です。
トランプ大統領の時代が「平和な時代」であったことを私たちは歴史の事実として記憶し、今の混迷の時代に誰が米国の大統領にふさわしく、世界平和にとって誰が望ましいのか、よくよく考えてみなければならないのではないでしょうか。
ハリス副大統領は「なぜ、戦争が起きたのか」、この質問に全く答えられませんでした。バイデン政権において、なぜロシアがウクライナに侵攻したのか、その理由を未だに理解できていないのです。「なぜ、戦争が起きるのか」、その問いに答えられない人は、「どうすれば戦争を終わらせることができるのか」という問いかけに対しても答えることはできないでしょう。
いよいよ都の近くにきて、それが見えたとき、そのために泣いて言われた。「もしおまえも、この日に、平和をもたらす道を知ってさえいたら……しかし、それは今おまえの目に隠されている。いつかは、敵が周囲に塁を築き、おまえを取りかこんで、四方から押し迫り、おまえとその内にいる子らとを地に打ち倒し、城内の一つの石も他の石の上に残して置かない日が来るであろう。それは、おまえが神のおとずれの時を知らないでいたからである」。
(ルカによる福音書 19章 41-44節)