2025年5月14日水曜日

第52回:日本の仮想敵国である中華人民共和国の国家目標

 中国共産党の価値理念を表す「勿忘国恥」(ぶつぼうこくち:国恥を忘れることなかれ)という言葉を聞かれたことがありますか。この言葉が中国共産党の国家目標を端的に表現したものであることを多くの日本人は知らないでいます。というよりも、あえて知らされないようにされています。それは、中国共産党の世界的野望を覆い隠すためであり、その歴史的国家目標を確実に実現するためです。

 「勿忘国恥」という言葉に込められた意味には、現代の世界が直面している最も深刻な問題が潜んでいるのです。はっきりと言えることは、中国共産党こそが、世界万民にとって最も危険な存在であり、世界平和を実現するためにはどうしても排除しておかなければならない害悪であるということです。

 それでは、「勿忘国恥」とは、どういう意味なのでしょうか。ここで「国恥」とは具体的に何を意味しているのでしょうか。「国恥」とは、第一次アヘン戦争以来のおよそ100年の歴史のことで、「恥辱の一世紀」とも言われています。そして、この恥辱を決して忘れることなく、さらには「恥辱の一世紀」の恨みを晴らすことこそが、中国共産党が掲げる「中国の夢」と呼ばれるものなのです。つまり、中国共産党は歴史的な恨みを晴らし、恥辱の歴史を栄光の歴史に変えることだけを追い求めているのであり、そのためには決して手段を選ばず、世界平和や万民の幸福などはどうでもよいのであり、実に利己的な「中華民族の偉大な復興」というスローガンを掲げて、その貪欲さをむき出しにしているのです。

 このような中国共産党の野望を私たちははっきりと知らなければならないのです。そして、彼らは「国恥」を意味する具体的なものとして、以下の六つの戦争を取り上げているのです。
 一、第一次アヘン戦争(1840年~42年)
 二、第二次アヘン戦争(1856年~60年)
 三、日清戦争(1894年~95年)
 四、義和団事件(1900年)
 五、満州事変(1931年)
 六、日中戦争(1937年~45年)

 実に、これらの六つの戦争の中で、日本は四つの戦争(日清戦争、義和団事件、満州事変、日中戦争)の当事者となっています。このことからも、中国共産党にとっての主敵は日本であることが分かります。彼らにとっての国恥は日本によってもたらされたものであり、恥辱の一世紀は日本による侵略のゆえにもたらされたものなのです。しかし、それは歴史の真実ではありません。中国共産党の常とう手段は歴史を捏造することであり、虚偽宣伝により人民を洗脳することです。従って、今日のほとんどの中国人は歴史の真実を知りません。それは、教えられることがなく、知らされることもないからです。共産党独裁政権のもとでは、歴史の真実に出会うことは決してできないからです。

 私たち日本人は目を覚まさなければなりません。かつての明治政府にとって最大の脅威がロシア帝国であり、さらには昭和の時代においてはアメリカが仮想敵国であったように、今日の日本にとっての最大の脅威であり、仮想敵国であるのは、間違いなく中国共産党の一党独裁体制にある「中華人民共和国」なのです。

 歴史を振り返ってみれば、かつての東西冷戦のただ中にあって、西側諸国は安全保障上の理由から中国共産党政権に対して歩み寄りました。そして、中国との国交正常化を実現することにより、対ソ連戦略を優位に進めようとしたのですが、その時に、世界の指導者の中には、一抹の不安を感じる者もいたのです。それは、中国共産党と手を組むことによりもたらされる世界の悲劇を予感していたからでした。

 1972年2月21日、電撃訪中により中国との正式な外交関係樹立の基礎を築いた米国のニクソン大統領は、中国共産党に世界を開いたことで「フランケンシュタインを造ってしまったのではないかと心配している」とその胸の内を語ったことがありました。また、1972年9月、日中共同声明の調印式を終えて帰国する際に、大平正芳外務大臣(当時)は「中国は、低姿勢だったが、50年たったら態度はガラッと変わる。大きく経済発展して日本を見下すようになる」と中国の横柄さを見抜いていたのです。

 国内的にはより独裁主義的となって人民を抑圧し、対外的にはより強権的で自由を敵視する覇権主義に傾注していく中国に対して、「もうたくさんだ」とその本音を吐露したのはトランプ大統領でした。私たち日本人にとって真の世界平和とは何であるのか、日本国の国益、そして、日本国民の幸福とは何であるのか、そのことに真摯に向き合うならば、そこに一つの明白な答えが見えてくるはずなのです。

 大東亜戦争終戦80年の節目となる今年、私たち日本人は本心からの言葉を叫ばなければならない時を迎えているのです。中国共産党に対して、日中友好などという偽善的なきれいごとではなく、真実の言葉を語らなければならないのです。「もうたくさんだ」、この一言が、日本を救い、世界を救い、さらには中国共産党の虚偽と圧政に苦しめられている中国人民をも救う言葉となるのです。

 ちなみに、1971年9月、昭和天皇は最初の外遊の際、給油のために立ち寄ったアラスカ州アンカレジでニクソン大統領と会談しています。ニクソン大統領が、「勤勉な人口を抱え、進歩を遂げており、いつまでもこのまま無視することはできない。対話を始めるために北京を訪れる予定だ」と伝達し、訪中が東アジアの平和維持のために重要であることを強調したことに対して、昭和天皇は訪中の趣旨に同意することを表明されましたが、その一方で「実際の諸問題はそう簡単には解決しないだろう」と感情を込めて警告されたと伝えられています。また、「米国との関係が強化されることを望んでいる」とも語られました。昭和天皇は台湾問題なども念頭に実に的確に当時の国際情勢を達観しておられたのです。そして、中国共産党の野心をも正確に見抜いておられたのです。

 小羊が第二の封印を解いた時、第二の生き物が「きたれ」と言うのを、わたしは聞いた。すると今度は、赤い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、人々が互に殺し合うようになるために、地上から平和を奪い取ることを許され、また、大きなつるぎを与えられた。 (ヨハネの黙示録 6章 3-4節)