2024年10月1日火曜日

第11回:「Make America Great Again」の真意(1)

 「米国を再び偉大にする(Make America Great Again)」とは、どういう意味なのでしょうか。おそらくは、ほとんどの日本人はこのスローガンの真意を知らないのではないでしょうか。それは、「偉大にする」という言葉の真意を理解できていないからです。トランプ前大統領が米国を偉大にするという、その「偉大さ」とはどういうことなのか、まずはその意味を知らなくてはならないのです。

 米国を再び偉大にするということは、米国がかつて偉大な国であったことが前提になっています。かつては偉大であった米国が、今やその偉大さを失い、偉大な国ではなくなってしまったのであり、だからこそ、トランプ前大統領は、かつてのような偉大な米国に再び立ち戻ることをひたすら願っているのです。偉大でなくなった米国の惨状に胸を痛め、あたかも地獄の中にいるかのように苦しみ喘(あえ)いでいる愛する祖国を何としてでも救わなければならないと思っているのです。

 そこで、私たちは何よりも米国が偉大であったとはどういう意味なのか、つまり、その偉大さとは何であったのかについて知らなければならないのです。米国が偉大であったのは、その軍事力において他国を凌駕する世界最強の国家だったからではありません。その経済力において世界一のGDPを誇り、また、その科学技術においても常に世界の最先端を走っていたからでもありません。ましてや、米国の大統領が世界で最大の権力者であったからでもありません。

 米国が偉大であったのは、米国が神の御心によって建国された信仰の国であったからなのです。米国の偉大さは、その建国精神にあり、建国以来、連綿と継承されてきた伝統的な価値観にこそあったのです。建国の理念こそが米国の偉大さの根源であり、神の御心によって建国されたという美しい物語が、米国を偉大な国にしたのです。

 トランプ大統領は2017年2月の全米祈祷朝食会で、「米国は信仰の国」であり、「互いへの信仰、神への信仰を持ち続ける限り、米国は繁栄する」と語りました。また、翌年の全米祈祷朝食会でも、「我々の権利は人間によって与えられるものではない。創造主から来たものだ。何があろうと、いかなる地球上の力も我々の権利を奪うことはできない」と語り、神への信仰こそが、米国社会の礎であることを表明したのです。ここに、米国の偉大さの源泉があります。米国の偉大さは、神への信仰によって確立されたものであり、神が米国を祝福することにより、その偉大さは確固たるものとなり、神聖なものとされたのです。

 一つの国家の真の偉大さはどこにあるのでしょうか。私は、一つの国家の真の偉大さは神との関わりにあり、さらには建国の精神にこそあると思います。そして、世界に存在するすべての国家には、それぞれに美しい建国の理念があり、物語があるのではないでしようか。神は一つの国家が建国される時、何らかの形で関わりを持たれ、神の御心を建国の理想とし、国家の始まりとするように導かれたに違いないと、私は確信しています。神は自らの理想を共有してくれる者たちを探し出して、一つの国家を建国され、この地上に神の理想を実現しようとされたのです。

 米国は、まさに神がその建国に深く関与された神の摂理における中心的国家でした。神は建国の父祖たちを守り導かれながら、神の理想を掲げる国として、米国を建国されました。この建国の物語の中にこそ、米国の偉大さを見ることができるのであり、この偉大さをトランプ前大統領は取り戻したいと願っているのです。

 米国の建国は1776年ですが、その起源は1620年にあります。当時のイングランド王の弾圧を受けたごく少数のピューリタン(清教徒)たちは、信仰の自由を求めてメイフラワー号に乗り、米国に渡ったのです。後に、「ピルグリム・ファーザーズ」と呼ばれるようになった清教徒の一団は、ただ一つの願いを抱いていました。それは、新大陸に神の理想国家を建設することでした。神が住むことのできる国、そして、神の理想を建国の理念とし、神と共に歩むことができ、神と常に対話することのできる国、すべてのことが「神の御名によって」行われる国、このような新しい国を建設するために、彼らは大西洋の荒波を超えて、1620年11月に米国大陸に上陸したのです。

 ピューリタンたちは神の目的のために故郷を捨て、神の指図にのみ従って大海原を乗り越え、神だけを唯一の慰め、唯一の希望、そして、唯一の友、唯一の相談相手として、新大陸に向かったのです。ここに神にのみ屈服し、神にのみ聞き従った美しい信仰者の物語があったのです。これが米国の建国物語であり、建国精神なのです。

 トランプ前大統領が取り戻したいのは、この美しい建国精神なのです。なぜなら、この建国精神にこそ米国の偉大さがあるからです。そして、この建国精神に米国が立ち戻ることこそが、米国が再び偉大になることなのです。従って、米国の偉大さは、政治力や経済力、ましてや軍事力にあるのではありません。米国が偉大さを取り戻すとはどういうことなのかといえば、まずは米国建国の始まりとなった神を取り戻すことであり、さらには信仰の自由を求めた建国の父祖たちの所願であった自由を取り戻すことなのです。

 トランプ前大統領は、神と自由を守るために戦っているのであり、さらには失われつつある神と自由を取り戻すために戦っているのです。そして、神と自由を取り戻すことこそが、米国を再び偉大にすることであり、神の下にある米国となり、神と共にある自由を謳歌する米国であるならば、米国は偉大な国家であり続けることができるのです。これが、「Make America Great Again」の真意なのです。(つづく)

 それゆえ、あなたがたの神、主が命じられたとおりに、慎んで行わなければならない。そして左にも右にも曲ってはならない。あなたがたの神、主が命じられた道に歩まなければならない。そうすればあなたがたは生きることができ、かつさいわいを得て、あなたがたの獲(え)る地において、長く命を保つことができるであろう。 (申命記 5章 32-33節)